「毎日のようにイヤホンやヘッドホンで音楽を楽しんでいる」という人に知っておいていただきたいのが「イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)」のリスクです。
世界の若者11億人がリスクにさらされていると言われていて、ヘッドホンやイヤホンを使うことによって生じる難聴です。今回はイヤホン難聴(ヘッドホン難聴)の症状や原因、そして対策方法について解説します。
イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)とは
2019年に世界保健機関(WHO)が、スマートフォンやオーディオ機器を使い大音量で音楽を聴く時間が増えた若者に、難聴のリスクが伴うことをプレスリリースで報告しました。
スマートフォンなどのオーディオ機器の普及によって、場所や昼夜問わず音楽を聴く習慣が若年層まで広がったことが難聴リスクの増加に関係しています。
イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)とは、イヤホンやヘッドホンを使用して大音量で音楽を聞くことによって起こる難聴のことです。
爆発音のような音の強振動やライブ会場の大音響などにさらされることで起こる難聴を「音響性難聴(音響外傷)」。工場の機械音や工事現場などで一定以上の大きさの音を絶えず聞いていることで起こる難聴を「騒音性難聴」と呼びます。イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)は音響性難聴という種類になります。
世界保健機構(WHO)は2015年に、世界各国の男女12歳~35歳の若者のうち11億人が、携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンで「有害な音量」の音楽を聞くことによって音響性難聴のリスクにさらされていると報告しています。
「イヤホン難聴」は早期治療をしないと回復しづらい
「イヤホン難聴といえる比較的若い世代が患う難聴は、近年、たしかに増えています。
若い頃から、長時間にわたって音楽を聴く環境がイヤホンやスマートフォンなどにより可能になったので、ある種の現代病といえるかもしれません。
このイヤホン難聴のやっかいなところは、自覚症状を感じにくいことと、そして早期に治療しないと回復しにくいこと。気づいた頃には病状が進んでいることもあるので、意外と怖い病気かもしれません
現在の医療では一度傷ついた聴毛や有毛細胞は再生不可能です。失われた聴力がもとに戻ることはなく、大音量で音楽を聴き続けた結果は想像しているより深刻です。
イヤホン難聴の原因

画像右側の内耳の中には蝸牛(かぎゅう)という器官があり、その中に「有毛細胞」という音を感じ取る細胞があります。
有毛細胞の働きは、蝸牛に伝わってきた音の振動を電子信号へと変換し、聴神経を通じて脳に伝えることです。この流れで音が聞こえます。しかしこの有毛細胞は大音響や騒音によって傷つき、壊れてしまいます。
難聴はこの蝸牛が損傷し、周囲の神経から脳に音を正しく伝えられなくなった状況のことを言います。
初期症状は、耳鳴りや、耳がつまったような感じがすることが多いといいます
イヤホン難聴になるリスク目安
具体的には、100dB以上の大音響では急に難聴が生じることがあり、80dB程度でも1週間当たり40時間以上、98dBで1週間当たり75分以上の音を聞き続けると、難聴の危険があるとされます。
つまり、ヘッドホンやイヤホンを使い、「大音響」かつ「長時間」で音楽を聞いていると、有毛細胞が傷ついて音が聞こえにくくなる可能性があるわけです。
140dB | |
130dB | ジェット機 |
120dB | 飛行機 |
110dB | |
100dB | ライブハウス カラオケ |
90dB | 工事現場 |
80dB | 地下鉄 工事現場 |
地下鉄に乗っているだけで80dBの騒音に曝されています。
したがってヘッドホン難聴(イヤホン難聴)の原因は、スマホとイヤホンを使うなどして一定の音量以上で長い時間、音楽を聞くことにあります。
日常生活でもある程度の騒音に曝されているので、イヤホンやヘッドホンでの長時間音楽を聞くのは大変危険です。
地下鉄に長時間乗っている人は注意
地下鉄の騒音レベルは80d。最近はコロナの影響もあり、地下鉄の窓が開いていることもあります。
地下鉄に長時間乗っている人は難聴リスクが上りますので、イヤホンなどをすることでも対策可能です。
最近はノイズキャンセリンぐイヤホンもあるので効率的に使用していきましょう。
工事現場や飛行場で働く人はイヤーマフを
工事現場や飛行場で働く人はイヤーマフを使用することをおすすめします。
実はこういう場所で働いている人と難聴度は密接な関係があり、日々の対策が必要です。
イヤホン(ヘッドホン)難聴の症状
イヤホン難聴の初期症状は耳鳴りや、耳がつまったような感じがすることが多いと言われています。
耳が聞こえづらくなったと感じ、ときどき耳鳴りがあり、日常生活の中でめまいが起こることも。ときには耳の奥に痛みを感じるケースもあります。「あれ?」と聞こえや耳に違和感を覚えるケースが多いです。
また、イヤホン(ヘッドホン)難聴の場合は低音が聞こえにくくなる「低音難聴」や、音がこもったように(詰まったように)聞こえる症状が出ることもあります。
とにかくこんな症状がでた場合はすぐに耳鼻科にいくことをオススメします。
突発性難聴との違い
イヤホン(ヘッドホン)難聴とは別に、ストレスが原因で起こる難聴は「突発性難聴」という難聴もあります。
年齢に関係なく起きる突発性難聴は突然耳の聞こえが悪くなる恐ろしい病気です。最近の難聴の傾向としてイヤホンによる耳への負担が増えており、イヤホンをつけて長時間スマホの音楽や映像を大音量で聞いていることが関係しています。
イヤホン(ヘッドホン)難聴の対策方法
内耳にある有毛細胞がダメージを受けていなければ、耳を安静にすることで聞こえを回復させることができます。
ふつうの音量でもイヤホンなどで1時間ほど音楽などを聞いたら、一度休憩をするようにしましょう。10分ほど耳を休めるのが理想です。
そのほか、ライブやクラブなどでは耳栓を持っていき、ゆるく耳に入れるのもいいです。なかなかそういう場で耳栓を使うのは難しいと思いますが常備しておくと便利です。
イヤホン難聴の予防方法はとにかく、耳を休ませること。適度に休憩をいれることが大切です。
スピーカーの横の席など、音が直撃する環境から耳をやんわり守ることで、音楽を安全に楽しむことができるはず。
すでに有毛細胞が傷ついていた場合は、病院で薬を投与する必要があります。しかし、聞こえが元に戻ることは難しいかもしれません。
ヘッドフォン、イヤホンで長時間音楽を聞くのを避けよう
若い人の難聴が増えています。この理由はイヤホンやヘッドフォンで長時間音楽を聞くことによって、聴覚細胞(有毛細胞)が傷つき、死滅しているからです。
一度失った聴力はもとに戻りません。音楽を聞くときは音量を小さくするか、長時間の視聴は控えた方がいいかもしれません。
音楽を生業としているアーティストの難聴率は高いです。日々スタジオで音楽を爆音できいたりする必要があるからです。
イヤホン(ヘッドホン)難聴と治療方法
症状を感じたら、まずは耳鼻咽喉科にかかることがオススメです。症状が軽く、気のせいかも?と思っても、違和感があるのなら、一度検査に耳鼻科を受診しましょう。
イヤホン難聴は比較的判断しやすい病気でもあるので、検査結果に時間を要する場合も少ないです。
聴覚検査などを経て、イヤホン難聴と診断されれば、投薬で治療をおこないます。
音を脳に伝わる電気信号に変換する有毛細胞。正常な有毛細胞の毛は48時間サイクルで生え替わっていきます。まだ有毛細胞がまだ生きていれば投与による治療と日々の予防方法で聞こえが戻る可能性はあります。
イヤホン難聴は最初の1週間が勝負
いきなり耳が聞こえなくなるということがないために、気のせいだと思ったりする人は多いです。しばらく様子を見る場合が多くすぐに診察を受ける人が少ないのもネックになっています。
音の聴き方や習慣によって発症するイヤホン難聴。年齢や性別などの属性がわかりにくいのも病気を意識しにくい要因かもしれません。
大切なのは、「症状が出てから一週間以内に受診」すること!
聴回復のゴールデンタイムといわれる期間は症状が出てからの一週間です。この期間に病院を受診すれば飲み薬によって的確に治療することで、多くの場合、症状は治ります。
ですが、その期間を超えてしまうと、神経の変性が起きてしまい、その後、一生症状とつきあっていかなければなりません。
まとめ
ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞くのが好きな人にとって、ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)は常に意識し、予防に努めたい問題です。
音量や時間に注意しながら、健康的に音楽を楽しみましょう。
難聴になってしまう前に、日常生活の中で今からでもできることを実践し、耳をいたわってあげることが大切です。
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