人間が心身ともに健康に生きていくためには、食事を楽しみながら必要な栄養素を過不足なく充足する必要があります。
この食事の積み重ねが間違っていると体の不調に繋がる原因となってしまいます。
どの年代でも正しく栄養素を摂取することは必要ですが、特に年を重ねた時は栄養素が不足しないように気をつける必要があります。
健康に長生きしている人の目安となる健康寿命を伸ばすためにも、しっかり食事に気を遣う必要があります。
そこで、この記事では我々が「健康で元気で過ごすために必要なそれぞれの栄養素の役割となぜその栄養素が必要なのか」を紹介していきます。
栄養不足が引き起こす健康被害や病気

栄養不足によって起きる健康被害や病気は深刻です。特にシニアは食欲が低下したり、「噛む力・飲み込む力の低下」により若い時より食べられる量が減っている人が多いです。
また、年を重ねると「選択する食べ物がいつも同じ」ということが起きがち。これにより摂取する栄養素が偏ってしまいます。様々な食事を組み合わせ栄養を取ることで体内で栄養素は活躍出来ます。
ちなみに、栄養不足が引き起こすシニアの深刻な問題は以下のようなことがあります。
低栄養

低栄養は「栄養が足りないことで様々な病気を引き起こす栄養失調状態に近い」ことを言います。
実は日本のシニア65歳以上の男性12.4%(約170万人)、女性20.7%(約330万人)が低栄養状態と言われています。
低栄養から様々な健康問題に繋がり、寝たきりリスクを上げて介護される可能性が上る怖い健康問題です。
低栄養状態とはBMI18.5以下のことをいいます。年を重ねた時に低栄養状態だと、筋肉量の減少、基礎代謝の低下が起きます。
筋肉量が減少すると疲れやすく、活量の低下するとともに筋力も減少します。それにより身体機能が低下し、活動量も減ってしまいます。低栄養は「転倒・骨折」、「衰弱」、「寝たきり」という健康寿命を短くする怖い要因に繋がります。
更に詳しく:低栄養とは?シニアが気をつける健康問題
フレイル
虚弱という「Frailty(英語で虚弱)」という言葉からきた健康問題。
健康な状態と要介護(要支援)状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態です。
2040年には627万人がフレイルになると言われています。また現在でも約400万人がフレイルと言われていますが、この数字は表に出てきている数字であり、本当にさらに多いと予想できます。
体重減少、疲れやすい、だるさ、身体活動の低下、歩行速度の低下、やる気が出ない、感情のコントロールが出来ない、免疫力低下などの症状が挙げられます。
食事による栄養不足から、運動や生活習慣を見直す必要があります。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)とは、加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表します。
疫学調査によると、推定患者数は40歳以上で2100万人、女性2600万人いると言われています。この数字は高血圧の3900万人に匹敵する数になっています。
ロコモを改善するために食事を見直し、運動習慣を身に着けることが大切です。
さらに詳しく:ロコモティブシンドロームとは?介護にならないために
*栄養不足は様々な問題を引き起こす
上記で紹介した、低栄養、フレイル、ロコモティブシンドロームだけではなく、年を重ねることで栄養不足から様々な病気や健康問題に繋がります。食事だけしっかり摂れば健康で居られる訳ではなく、体を動かし筋肉を刺激していくことが大切です。
では、実際にどんな栄養素を摂取すれば、どういう効果があるのでしょうか。以下ではそこら辺を詳しく見ていきます。
年を重ねたら気をつけたい |
|||
フレイル |
ロコモティブシンドローム | サルコペニア | |
誤嚥性肺炎 | 高血圧 | 心疾患 | 関節疾患 |
認知症 | 骨折転倒 | 衰弱 | 難聴 |
シニアの栄養のとりかた

高齢者は一人一人の生理的、心理的状態が異なります。特に整理機能の低下にともなう低栄養状態が目立ちますが、対策はその人にレベルによって変わってきます。低栄養状態になると、介護リスクが上ってしまうので注意が必要です。
ここでは、高齢者の食事で気をつけるポイントを紹介します。
*前期高齢期(65歳~74歳)
まだまだ元気に活動できる時期です。活動量に応じてエネルギーの補給な反面、食欲不振で食事量が減ったり、味覚が鈍って味付けが濃くなりがちです。日本人は塩分を摂り過ぎている傾向にあり、特にシニアの高血圧は万病のもとです。
香りや見た目を工夫し、量・味ともに満足できる食事を作りましょう。
*後期高齢期(75歳以上~)
生理的老化が進み、そしゃく、嚥下(飲みくだす)機能低下などの障害が起こります。低栄養状態が更に進まない様に食べやすくする工夫はもちろん、健康食品などもうまく利用しましょう。
しかし、健康食品はあくまでも食事の補助です。食事の足りない部分を補う目的で使用しましょう。というのも、健康食品やサプリメントは食事で摂取する栄養素とは別で、過剰症や栄養素の吸収が悪かったりするからです。
さらに詳しく:健康寿命をのばす食事
ボリュームは少量でも内容を充実した食事を
活動量が減り、書局も減退するため、食事の量は減りがちです。量は少なくても、必要となるエネルギーと栄養素をしっかり摂れるようにしましょう。
使用する材料を増やし、さまざまな食材から栄養素とることで少量でも栄養素をしっかりとれます。また、主食は体を動かす貴重なエネルギーになるので少量でも食べるように心がけましょう。
食欲がわくような工夫を
食材の旬や産地、豊かな香りや彩り、美しい盛り付けなどにこだわりを。食事は味だけではなく、見た目、香りなど視覚と嗅覚を刺激することで食欲がわいてきます。
食べやすい調理法を心掛ける
咀嚼や嚥下機能に合わせて、材料を選び、切り目、刻み方、ミンチ、とろみ、食事回数、温度などをアレンジするといいでしょう。
しかし、自分の咀嚼や嚥下機能がどの程度か分からない人もいると思いますので、以下の「食事の固さ診断」をしてみてください。診断後、あなたにあった食事の固さ、大きさなどが分かります。
最後には市販の介護食、やわらか食一覧が表示されます。
よくかんで、ゆっくり食べる
消化・吸収機能の低下には、よく噛んで唾液の分泌を増やすようにします。消化が悪いからといって、たんぱく質や食物繊維を減らすとシニアにとっては貴重な栄養素を減らすことになります。
それでは、実際にどういう栄養素をとっていけばいいのか下記で紹介していきます。
また各栄養素の役割、効果なども併せて記載しています。
5大栄養素の働き

栄養素が活躍する舞台は食品の中ではなく、人間の体の中です。
栄養素は約45~50種類あり体内における働きが似た物をまとめると5大栄養素に分けられます。
栄養素は「エネルギーの基になるもの」、「体をつくるもの」、「体の調子を整えるもの」に分けられます。
5大栄養素を意識してまんべんなく栄養素を摂取することが求められます。
5大栄養素とは「炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル」の5種類。それぞれ栄養素の特徴と働きが変わってきます。
炭水化物(糖質)
エネルギー源になるいわゆる糖質と、機能性がある食物繊維の総称です。
穀物(ごはん、めん、パン)、いも類、豆、果物、砂糖などに多く含まれています。
脂質
脂質の大部分は中性脂肪で脂肪酸とグリセロールから構成されています。非常に高エネルギーで体を動かす熱量になります。
脂質は悪者扱いされることが多いですが、少量でも大きなエネルギーになり、貯蔵エネルギーにも適しています。体温の保持、脂溶性ビタミンの吸収促進など大切な栄養素です。
植物油や魚油、バター、ラード、牛脂、種子、魚介などに多く含まれています。
たんぱく質
昨今の筋肉ブームでたんぱく質を積極的に摂取している人も多いと思います。筋肉や臓器といった体の構成成分に使われ、飢餓状態になるとエネルギー源として利用されます。
たんぱく質を積極的に摂取することで健康維持に繋がると言われており、豊富に含まれている商品が増えてきています。
肉、魚介、大豆、大豆製品、卵、乳、乳製品に多く含まれています。
ビタミン
13種類あり、脂溶性と水溶性に分かれます。ビタミンは体を動かすエネルギーになる炭水化物、脂質、たんぱく質とは違い、体の調整機能に関わります。
炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝、体の諸機能の維持、血管、粘膜、皮膚、神経、筋肉、骨や歯の健康維持や新陳代謝を促します。また、活性酸素を無害化し、生活習慣病を防ぎます。
野菜、いも、果物、穀物に多く、魚介、肉類にも含まれています。
ミネラル
微量でも健康維持に不可欠な必須ミネラルは現在16種類あります。
ビタミンと同様に炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝、体の諸機能の維持、血管、粘膜、皮膚、神経、筋肉、骨や歯の健康維持や新陳代謝を促します。また、活性酸素を無害化し、生活習慣病を防ぎます。
ミネラルは乳製品のカルシウム、レバーの鉄など食品ごとに特徴があります。
*食材を組み合わせることが大切
必要な栄養素を過不足なく満たすのは非常に難しいですが、食材を組み合わせることで多くの栄養素を摂ることが可能です。
食品の中にどんな優れた栄養素があっても、それが体内で有効に働くわけではありません。
栄養素は1つだけでは機能せず他の栄養素の働きが必要不可欠です。実際にサプリメントから単独で摂取した栄養素は食品からとるよりも吸収、利用されにくい場合もあります。
各栄養素にはそれぞれ役割があり、互いに作用しあって初めて、「栄養」として働きます。「食事はバランスよく」と言われているのはこういう理由からです。
それでは、実際に各栄養素が体にとってどんな役割があるのか、詳しく見ていきましょう。
それぞれの栄養素の役割と効果

ここでは各栄養素がどういう効果があり役割があるのかを詳しく紹介していきます。なかなか色々な栄養素を摂るのは難しいとは思いますが、健康を維持するためにも意識していきましょう。
炭水化物
炭水化物は一般的な食生活ならもっとも摂取量が多い栄養素です。栄養上とくに重要と言われているエネルギー源になるいわゆる糖質と、様々な生理機能がある食物繊維に分かれます。ここでは糖質について詳しく記載していきます。
近年、特に糖質制限が流行っていますが、摂りすぎは確かに健康上よくありませんが、炭水化物の制限は食物繊維が不足する原因にもなります。何事もバランスよく摂取することが望ましいでしょう。
*炭水化物の役割と効果
- 体を動かす重要なエネルギー源
- 貯蔵エネルギーになる
- 脳などの組織の構成成分になる
体を動かす重要なエネルギー源である炭水化物。現代では欠乏症になることは珍しいですが、不足すると疲労感、脱力感、酷くなると体重減少に見舞われます。脳や神経系にエネルギーが共有されず、酷い場合は意識を失います。
脳などの一部組織ではブドウ糖をエネルギーとして使うことが出来ず、こういう組織のエネルギー源になります。
*効率よい食べ方
- ビタミンB群と一緒に
- 毎食規則正しく適量を
炭水化物からエネルギーを得るにはビタミンB1などのビタミンB群が必要です。ビタミンB群は胚芽や外皮に多く含まれ、精白された物にはほとんど含まれていません。
炭水化物を摂りすぎると体内でエネルギーに利用されず、貯蓄エネルギーになり体に蓄積されます。
貯蔵エネルギーの多くは中性脂肪で過剰に摂取されると肥満になります。自分の体や活動量にあったエネルギー分の炭水化物を毎食規則正しく摂取するようにしましょう
しかし、年を重ねた人の場合、痩せていることによって健康問題が生じることがあります。年を重ねたら少しくらいぽっちゃりの方が健康で長生きできると考えています。
食物繊維
ヒトの消化酵素では消化されない炭水化物で第六の栄養素ともいわれ、さまざまな作用があります。
食物繊維はおもに植物の細胞を構成する成分で、水にとけるかどうかで水溶性と不溶性とに分かれます。
*食物繊維の役割と効果
水溶性の場合
- 消化速度の抑制
- 血糖値の急上昇防止
- コレステロールの吸収抑制
- 血圧の低下
不溶性の場合
- 腸の蠕動(ぜんどう)運動の促進
- 腸内環境の整備
- 食事の満足感向上
- 有害物質の排出
食物繊維は便のかさを増やしたり、腸を刺激して蠕動運動を活発にして便の排泄をスムーズにさせる効果が認められています。
腸内の環境を整えて、大腸がんなどの病気を予防する効果があると考えられています。
血糖値の急上昇を防いだり、コレステロールの吸収を抑制したりと、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の予防効果があるとみられています。
また食事の腹持ちをよくすることから肥満を防ぐ効果もあると言われています。
*効率の良い食べ方
- 野菜などをしっかり食べる
- 玄米や穀物を利用する
現代の食生活では食物繊維は不足しがちな成分です。野菜不足だったり、ダイエットをして食事量を減らしたりすると、目標量に届かなくなります。食物繊維が豊富なの野菜、きのこ、海藻、豆、いもなどを毎食欠かさずに食べることが大切です。
ごはんなどの主食はもっとも食べる量が多い食品ですが、白飯にはそれほど多く含まれていません。ごはんを炊くときは雑穀や発芽精米を併せて炊くといいでしょう。
食物繊維は植物性の食品に多く含まれます。穀物、豆類、きのこ、海藻類。野菜ではごぼうなどの根菜類に多く含まれます。
脂質
高エネルギーで効率のようエネルギー源になります。エネルギー源だけではなく、細胞膜など体の構成成分にもなります。脂肪は脂溶性ビタミンの体内への吸収を助けたり、必須脂肪酸の供給源になります。しかし近年、食事の欧米化が進み、日本人は脂肪を摂りすぎていることが多いです。しかし、
*脂質の役割と効果
- エネルギー源になる
- 貯蓄エネルギーになる
- 体温の保持
- 脂溶性ビタミンの吸収促進
少量でも多くのエネルギーを得ることができます。使われなかったエネルギーは中性脂肪(体脂肪)として貯蔵されますが、体脂肪は体温維持や内臓を守る役割を担います。一概に脂質は悪者という訳ではありません。
また、脂溶性ビタミンの体内への吸収を助けたり、必須脂肪酸の供給源になります。脂質の一種であるコレストロールは細胞膜やホルモンの材料になる大切な栄養素です。
*効率のよい食べ方
- 摂りすぎには注意
- 油を使った料理を減らす
脂肪の摂りすぎは生活習慣病の原因になると言われています。厚生労働省がまとめている日本人の食事摂取基準では脂質からとるエネルギーは20~30%にすることが目標にされています。
たんぱく質
近年もっとも注目されている栄養素です。筋肉や臓器、皮膚、体の主成分として重要な栄養素で酵素やホルモンの材料にもなります。
たのぱく質はアミノ酸の結合体で、体内のたんぱく質は合成と分解を繰り返し、分解されるとアミノ酸になり、アミノ酸は再利用されて必要なたんぱく質に生まれ変わります。一部は排出され、不足分は食品から摂取する必要があります。
*たんぱく質の役割と効果
- 体の組織を構築する
- 酵素やホルモンの材料になる
- エネルギー源になる
たんぱく質は人体そのものになります。筋肉や臓器など、体を構成する細胞の主成分がたんぱく質です。子供の成長には特に欠かせない栄養素で不足すると成長障害を起こします。体の機能を調整する酵素やホルモン、免疫抗体などの材料にもなり、生命活動を円滑にする大切な働きがあります。
特に近年は運動ブーム(筋トレブーム)でタンパク質を多く含んでいる製品が発売されています。
全身に酵素を運ぶヘモグロビン、網膜で光を確認するロドプシン、鉄を貯蔵するフェリチンなどもたんぱく質の一種です。体のあらゆる所にたんぱく質は存在し、物質の運搬、情報の伝達、栄養素の貯蔵に関わってきます。
*効率のよい食べ方
- ビタミンB群と併せて
- 適度な運動が必要
たんぱく質の代謝にはビタミンB群が欠かせません。ビタミンB群が不足するとたんぱく質を摂取しても、体内でうまく利用されません。なかでもビタミンB6は関りが深く、分解や合成に必要不可欠です。ただたんぱく質を摂ればいいという訳ではなく、やはりバランスが大切です。
また、激しい運動をする人はたんぱく質の分解が促進されるため、食品から摂取量を増やす必要があります。一方、運動不足が続くとたんぱく質の利用効率が悪くなり、必要量が増えてしまいます。たんぱく質の利用効率を上げるためにも適度の運動がおすすめです。
ミネラルの種類と働き

ミネラルは体の構成成分になったり、酵素や補酵素の成分になるなどそれぞれに体の働きを正常にしたり、維持したりするのに役立ちます。単一の元素からなる栄養素で無機物です。厚生労働省が定める、摂取栄養素をまとめてある食事摂取基準で示されているミネラルは16種類あります。
ミネラルは体内では合成できず、食品からとる必要があります。また、適量の範囲が狭く、過剰症や欠乏症を引き起こしやすいものもあるので注意が必要です。日本人の場合、カルシウム、亜鉛は不足しやすく、ナトリウムやリンは摂りすぎる傾向にあります。
ここでは、ミネラル13種類に焦点を当て、それぞれの役割と効果を説明していきます。
ナトリウム
日本人は過剰摂取傾向にあるナトリウムは摂り過ぎが心配されているミネラルの一つです。体内の水分量やミネラルバランスを調整し、体内の適切な水分を保持します。また、神経系を正常に維持したり、心臓や筋肉の機能を保つ働きもあります。摂り過ぎは問題ですが、不足することでの問題も多いです。
*ナトリウムの役割と効果
- 細胞の浸透圧の維持
- 体液量の調整
- 体液のpHの調整
- 筋肉の弛緩作用
ナトリウムが不足すると、血圧が低下し倦怠感や疲労感を感じます。筋肉の低下や痙攣、食欲減退も起こしやすくなるので注意が必要です。不足することよりも過剰に摂ることの方が問題で特に日本人は多くとっているミネラルです。
*効率のよい食べ方
- 食事は薄味に
- カリウムを意識的に摂取
- 食物繊維もナトリウム吸収を妨げる
塩分を含む調味料の使用を減らすことがもっとも効果的です。料理は薄味に調理し、使用するしょうゆやソース、ドレッシングの量に気を付けましょう。また、減塩タイプの調味料を積極的に使用しましょう。
カリウムは余分なナトリウムを排出する効果があります。日本人は塩分を摂り過ぎているので、カリウムは注目されているミネラルです。野菜や大豆、果物はカリウムを多く含み、またこれらの食材は食物繊維も豊富です。食物繊維もカリウムと同様、ミネラルの吸収を妨げるの意識的に摂取するように心がけましょう。
日々の生活が忙しく、外食や中食が増えてしまうのは仕方ありませんが、これらは塩分を多く含んでいます。冷凍食品も同様でナトリウム量が多いので注意が必要です。
カリウム
カリウムは細胞内の水分量を調整、筋肉の働きをコントロールしたり、血圧を安定させる効果があります。ナトリウムとバランスを取り合う関係にあり、ナトリウムが過剰になるとバランスをとり排出する作用があります。
日本人は塩分を多くとる傾向にあるので、積極的に摂取したい栄養素です。ほとんどの食品に含まれていて、野菜、果物、大豆、海藻などに多く含まれています。野菜、果物を毎日しっかり食べていれば不足の心配はありません。
*カリウムの役割と効果
- 細胞の浸透圧の維持
- 体液のpHを調整
- 血圧上昇を抑制
- 筋肉の収縮、弛緩
細胞壁にはカリウムとナトリウムのバランスによって働くポンプ機能が備わっています。この機能によって細胞内の水分量を調整しています。
また、筋肉の収縮を正常にしたり、血圧の安定、そして骨粗しょう症を防いだりする働きがあります。年を重ねると高血圧、骨粗しょう症が問題になるのでカリウムは健康を維持するうえで大切な栄養素です。
*効率のよい食べ方
- 食品は生で食べて効率よく
- 煮物は汁ごと
- 利尿作用があるので注意
カリウムは熱に弱く、ゆでるなどの調理方法で損失されやすいのが特徴です。ゆでても損失の少ない根菜類、豆類、芋類、あるいは生で食べる果物は調理損失が影響しないので効率よくカリウムを摂取できます。
また、カリウムは茹でると煮汁にカリウムが溶け出ていると考えられています。どの栄養素でも同じような考え方が適応されており、煮汁ごと食べることをオススメします。しかし、塩分も摂ることになるので薄味で調理するか、出汁や香辛料などを使用するようにするといいでしょう。
カルシウム
骨や歯を形成し、血液などにも一定量含まれるミネラル。筋肉や神経の働きを正常に保ちます。
人体で一番多いミネラルで、マグネシウムなどど共に骨格や歯を形成しています。骨はカルシウムの吸収と形成を繰り返しており、カルシウムを貯蔵する機能もあります。血液中のカルシウム濃度は一定に保たれ、濃度が下がると骨から溶出。濃度が高くなると骨に沈着。溶出量が多くなると、骨粗しょう症の発症を招く原因になります。
子供から高齢者まで欠かせないミネラルで発育には必要不可欠です。高齢者の場合も骨粗しょう症を防ぐ意味でも意識して摂取するべきです。日本人は不足しがちなミネラルで、全世代で不足しているといわれています
*カルシウムの役割と効果
- 骨格や歯の形成
- 体内の情報伝達
- 筋肉の収縮、弛緩の調整
- ホルモンや酵素を活性化
カルシウムは骨や歯の主成分になります。骨粗しょう症を防ぐ意味でも積極的に摂取したい栄養素です。
また、イライラに効果的と言われるカルシウムですが、その理由はカルシウムが血液や細胞などに存在し、細胞内外に起きる濃度の差によって情報伝達。脳や筋肉に働きかける効果があるためです。実際、イライラに効果的かは分かっていませんが、ホルモンや酵素を活性化させたり、神経伝達物質を放出することは間違いありません。
*効率のよい食べ方
- 吸収率が条件によって変動
- ビタミンDと一緒に摂取
カルシウムは体内に吸収されにくい栄養素です。日本人は特に牛乳などからカルシウムを摂取するのが難しいそうです。生活習慣によってもカルシウムの摂取条件は変わり、吸収率が高まる食べ合わせや吸収率が高い食品を選ぶと効率よく摂取することが出来ます。
牛乳は40%。小魚は30%。野菜は20%と食品による吸収率は変わってきます。体内で最も吸収されやすい食品は乳製品で、牛乳は特にカルシウムが豊富で吸収されやすいです。
また、ビタミンDはカルシウムの吸収に必要なたんぱく質の合成がさかんにするだけではなく、カルシウムが骨に沈着するのを促す効果があります。ビタミンDを多く含む食品は少なく、サケやサンマの魚介類やきのこ類などに豊富です。
カルシウムとビタミンDを併せて摂取するように心がけましょう。
マグネシウム
骨格を形成するほか、様々な生理機能に必須のミネラルです。約60%が骨に貯蔵され、血液中のマグネシウムが減少すると骨から取り出されます。カルシウムと密接な関係があり、ともに働いて筋肉の働きを調整します。心臓が正常に動くのもこの働きが影響されています。
*マグネシウムの役割と効果
- 酵素反応を促進
- 筋肉を収縮
- 神経を鎮静
- 骨格を形成
多くの化学反応を支えるマグネシウムは全身の細胞で代謝や生合成を促す補酵素の成分になります。エネルギーの生産、たんぱく質の合成、神経伝達など多くの生命活動に重要な役割を果たします。
*効率のよい食べ方
精白していない穀物に多く含まれています。穀物、種子、大豆、海藻など様々な食品に含まれています。魚介類にも多く、魚を主菜を魚にするとマグネシウムが豊富な献立になります。通常欠乏症になることはありません
リン
骨や歯、細胞の材料になり、エネルギー代謝に関与するミネラル。全ての細胞に存在し、体内ではカルシウムに次いで2番目に多いミネラルです。85%がカルシウムと結合し骨格を形成します。残りはたんぱく質や脂質などど結合し、細胞膜や核酸の成分に使われており、重要な栄養素です。
*リンの役割と効果
- 骨格を形成
- 細胞の成長、分化
- 神経の機能保全
- エネルギー代謝
カルシウムとの結合して骨格を形成します。脂質と結合したリン脂質は細胞膜の主成分で、リン脂質が分解されて出来た脂肪酸は神経伝達に重要な成分です。
*効率のよい食べ方
- 加工食品をセーブ
リンは通常不足することはありません。というのも食品添加物のリン酸化塩に含まれる成分のためです。加工食品を多くとる人ほど摂り過ぎる傾向があり、注意が必要です。
鉄
赤血球中のヘモグロビンの構成成分として重要で全身の酵素を供給します。主に血液と筋肉に存在しており、女性は不足しやすい栄養素です。鉄不足は貧血や疲れやすくなったりします。現在30代女性の5人に1人は血色素が低値であると報告されています。
*鉄の役割と効果
- 酵素の供給
- 二酸化炭素の回収
- エネルギーの産生
- 酵素の材料
鉄は全身に酵素を供給する重要な働きがあります。たんぱく質と結合し、赤血球中のヘモグロビンなどになって肺で酵素を取り込んで全身の細胞へ供給します。さらに、細胞から二酸化炭素を回収。肺へ運搬し体外へ排出されます。
鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血になり、酵素が全身に供給されません。疲れやすくなり、持久力がなくなります。頭痛、動悸、息切れ、食欲不振などの症状がでますので、積極的に摂取したい栄養素です。
*効率のよい食べ方
- 鉄は吸収されづらい
- ヘム鉄の吸収率が高い
- ビタミンCで吸収促進
鉄は数あるビタミンの中でもとりわけ吸収されづらい栄養素です。食事から摂取した鉄の体内吸収率は15%程度です。ただし、この吸収率は体がどの程度鉄を必要としているかによって変わってきます。
動物性食品に含まれるヘム鉄という比較的吸収されやすい物もあります。一方、植物性食品に含まれる鉄は非ヘム鉄でヘム鉄に比べて吸収率が下がります。
鉄を摂取する場合、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収しやすくなります。ビタミンCには鉄を吸収しやすい形にし、ヘモグロビンの合成を促す作用があるからです。
非ヘム鉄はレバー類、シジミなどの貝類。非ヘム鉄は海藻や野菜類に多く含まれています。
亜鉛
多くの補酵素の成分になり、新陳代謝に欠かせない栄養素です。亜鉛は舌にある味蕾(みらい)という器官が担っています。亜鉛が不足すると味蕾の新陳代謝に影響がでるので味覚が正常に感じられなくなります。
*亜鉛の役割と効果
- 細胞の新生を促進
- 成長促進
- 性機能の発達、維持
- 味覚の維持
補酵素として亜鉛は代謝に関与しています。細胞が新しくなるときにたんぱく質が結合されるときに働き、成長や傷の修復などに不可欠です。味覚を守り、インスリンの合成にも必要です。
欠乏すると、成長障害、味覚異常、免疫力の低下、生殖機能の低下の原因になります。
そして、亜鉛は加工食品は亜鉛の吸収を妨げる時に使われる添加物が使われることがあるため、亜鉛不足にならないように注意が必要です。
リン酸塩(インスタントラーメンなど)、ポリリン酸(ハムチーズ・かまぼこ)、フィチン酸(漬物など)グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)は添加物に多く使われ、亜鉛の吸収を阻害します。
銅
鉄の利用を促進し、成長を助け、貧血を予防します。銅は金属ミネラルの中でも毒性が低く、仮に過剰にとったとしても便ともに排出されます。
銅は通常の食生活では不足しないことが分かっています。
*銅の役割と効果
- 酵素の材料になる
- 鉄の利用促進
- 活性酵素の除去
- 神経伝達物質の発生
銅は10種類の酵素の材料になります。これらの酵素はヘモグロビンに合成されるのを助けたり、エネルギーの生成を促したり、活性酵素を除去したりと多くの機能に関与しています。
欠乏症は通常は見られないが、亜鉛やビタミンCを大量に摂取することで銅の吸収が妨げられるため、サプリメントを利用する場合は注意が必要です。
マンガン
酵素の成分になって、骨の成長に関与し、抗酸化作用を発揮します。吸収率は鉄と反比例とされ、鉄と似た経路で体内に吸収、利用されるため、食事に鉄の含有量が多いとマンガンの吸収率は下がります。
*マンガンの役割と効果
- 酵素の成分になる
- 骨の形成に促進
- 炭水化物や脂質の代謝に関与
- 抗酸化作用
マンガンは骨の形成を促す酵素やたんぱく質などの代謝に関与しています。炭水化物の代謝にも関与するとみられていますが、くわしい作用は分かっていません。また抗酸化作用のある酵素にも関与します。過剰摂取も欠如もしづらい栄養素です。
ヨウ素
甲状腺ホルモンの主成分になり、発育や代謝を促します。多くが甲状腺に存在し、東日本大震災の時は注目された栄養素です。摂取されたヨウ素はほとんどが吸収されて、甲状腺にとりこまれます。最終的には90%が尿として排出されます。
海藻類、魚介類に多く含まれており、日本人は摂取量が多いです。世界的にみても突出した量を日本人は摂取しています。
*ヨウ素の役割と効果
- 甲状腺ホルモンの材料になる
- 発育を促す
- 新陳代謝を促す
甲状腺ホルモンは交感神経を刺激して各種の代謝を促す作用があります。子供の発育などにも関与します。呼吸や心臓、神経の活動を高める働きもあります。
セレン
抗酸化作用がある酵素の成分として注目をされているミネラルです。魚介類に多く含まれ、レバーなどの肉類にも豊富です。日本人はセレンを多く摂取しているため、不足することはないと言われています。
*セレンの役割と効果
- 酵素の成分になる
- 抗酸化作用
- ビタミンCの代謝に関与
- 甲状腺ホルモンの代謝に関与
セレンは抗酸化作用がある酵素の構成成分で活性酵素を分解します。世界的にみると摂取量がすくない地域では心筋症、皮膚異常、子供の軟骨化などが上ります。体の機能を守る働きがあるので大切な栄養素です。
クロム
インスリンの働きを助ける成分の材料になり、糖の代謝を促します。体内にクロムは少量しか存在しませんが、極めて重要な働きがあります。しかし吸収率が極めて低いです。
*クロムの役割と効果
- インスリンを活性化させる
- 糖尿病予防
- 脂質の代謝を促す
糖をエネルギーに変えるにはインスリンの働きが必要です。クロムはインスリンに働きを促す材料になります。クロムがないと糖の代謝異常(糖尿病)が起こりやすくなるので、クロムは摂取することは糖尿病予防にも繋がります。
また、脂肪の代謝にも関与しているのも特徴です。
色々な食品に微量ながらも含まれており、通常の食事をしていれば不足することはありません。また、仮に沢山とっても吸収が悪いので摂り過ぎることもありません。
モリブデン
窒素の代謝に重要なミネラルで尿酸の代謝に関与します。日本人はモリブデンを多く摂取しているので欠乏症、過剰症は心配ありません。
*モリブデンの役割と効果
- 補酵素の成分になる
- 尿酸の生成を促す
- ビタミンCに代謝に関与
- 甲状腺ホルモンの代謝に関与
尿酸の生成を促します。代謝の過程では体に害のある物質も生成されますが、これを無害なものに変えるためにモリブデンが必要です。
以上が厚生労働省が作っている食事摂取基準に記載されている13種類を紹介しました。これら13種類のミネラルは日々の生活の中で必須とされている栄養素です。これらをバランスよく摂り入れて食事をとることが大切です。
次はビタミンの種類と働きについて記載します。
ビタミンの種類と働き

ビタミンは体の機能を調整したり、維持したりするために必要不可欠な有機化好物です。13種類のビタミンが認められています。
体内では合成できなかったり、出来てもたりない微量栄養素がビタミンで、必ず食品で摂らなければいけません。
13種類のビタミンの内、4つの脂溶性ビタミンと9つの水溶性ビタミンに分類されます。
脂溶性ビタミンは摂取すると体に蓄積されるため、大量に摂ってしまうと過剰症を起こす心配があります。食事でとる分には問題ありませんが、サプリメントなどで摂取する場合は必要量をオーバーしやすいため注意しましょう。
*脂溶性ビタミン
脂質の一種で、体に蓄積されるため過剰症を起こすことがあります。油脂と一緒に食べると吸収率が高まり、効率よく摂取できます。
ビタミンA | ビタミンD | ビタミンE | ビタミンK |
*水溶性ビタミン
ビタミンB群とビタミンCとかがあり、多くは補酵素として働きます。体内で使われないと排泄されるために、毎食とるのが望ましい栄養素です。
ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 |
ビタミンB12 | 葉酸 | パントテン酸 | ビオチン |
ビタミンC |
ビタミンA
皮膚や目などの健康を守り、感染症予防する働きをする、脂溶性ビタミンの一つです。体内でビタミンAとして働く成分は50種類あると言われており、代表的なのがレチノールと植物性食品に含まれるα、βなどのカロテン類です。
*ビタミンAの役割と効果
- 視界の正常化
- 皮膚の健康維持
- 粘膜の健康維持
- 抗がん作用
ビタミンAは目の網膜で光や色に反射して視界の情報を伝えるたんぱく質の成分になります。視界や目の健康を守る重要な働きがあります。
また、外界と接する皮膚や粘膜にある細胞の形成に必要で、粘膜の乾燥や細菌感染を防ぐ作用があります。細胞を正常に分解させることから、子供成長にも欠かせません。発がん予防にも有効とされている栄養素です。また、βーカロテンには抗酸化作用があり、肺がん予防にも効果的です。
がんは日本人の死亡理由1位の病気です。ビタミンAを積極的に摂取することは健康寿命を伸ばすことに繋がります。
*効率のよい食べ方
- 肉、魚、野菜をバランスよく
- 油脂と一緒にとると効果的
- サプリメントに注意
肉類や魚介類に含まれるレチノールは体内で効率よく利用されます。一方、野菜などに含まれるカロテン類はビタミンAとして利用効率は少し劣りますが、抗酸化作用などの独自の作用をもちます。どちらに偏ることがなく、両方をバランスよく摂ることがおすすめです。
しかし、野菜に多いカロテン類は吸収されづらい成分です。カロテン類は脂溶性で油に溶けると吸収がよくなるため、炒めたり、ドレッシングをかけたりと、油と一緒に食べるといいでしょう。
また、カロテン類は過剰にとると脂質に溶けて体内で蓄積されるため、過剰症を起こすことがあります。サプリメントでビタミンAをとる人は注意しましょう。しかし、食品から摂取した場合の健康障害は報告されていません。
ビタミンD
カルシウムの代謝に関与し、骨や歯の形成に欠かせない栄養素。骨粗しょう症を防ぐために大切なビタミンです。
ビタミンDは皮膚にあるコレステロールの一種が紫外線に当たることで合成されます。しかし、量が少なく高齢者は合成されづらいので食事から摂取しないと必要量をまかなえない、貴重なビタミンです。
*ビタミンDの役割と効果
- カルシウムやリンの吸収促進
- 骨や歯の成長促進
- 血中カルシウム濃度の調整
ビタミンDはカルシウムやリンの吸収に必要なたんぱく質の合成をさかんにすることで、体内でカルシウムの吸収を助けます。また。カルシウムが骨に沈着するのをサポートする作用もあり丈夫な骨や歯を作ります。
またカルシウムは血液中に一定濃度存在し、筋肉活動を正常に保つなどの機能調整をしています。ビタミンDはこの濃度調整にも働きます。
*効率のよい食べ方
- きのこ類、魚介類を積極的に
- 干しシイタケは日光にあててから
ビタミンDは供給源が限られる貴重な栄養素です。穀物や野菜にはほとんど含まれず、肉類にもわずかな量しか含まれていません。供給源になるのは魚介類、もしくはきくらげをはじめとしたきのこ類に限られます。
干ししいたけは、乾燥して成分が凝縮されるだけではなく、生のままよりもビタミンDを豊富に含んでいると考えられています。干ししいたけからビタミンDをとる時は調理する前に日光にあてて成分を増やしてから使うといいでしょう。
ビタミンE
ビタミンEは脂溶性ビタミンの1種です。ビタミンEとして働く成分は8種類あり、もっとも作用が強い αートコフェノールは食品からの摂取量が最も多いです。そのため、食品摂取基準でもαートコフェノールを指標としています。
細胞膜の酸化を抑えて、有害な過酸化脂質から細胞を守る働きがあります。
*ビタミンEの役割と効果
- 抗酸化作用
- 細胞膜の正常維持
- 細胞の老化防止
- 結構改善
- 生殖機能の維持
ビタミンEは抗酸化作用を持つ栄養素で脂肪酸が酸化される前に酸化されることで過酸化脂肪の生成を防ぎ、細胞を守ります。また、末梢血管を拡張させて血行をよくする作用もあります。
性ホルモンの生成などにも関与しており、生殖機能の維持にも働きます。
*効率のよい食べ方
- 酸化に注意
- 他の抗酸化成分と一緒に
抗酸化成分の一つされていますが、それはビタミンEが酵素と結合しやすく酸化されやすいからです。ビタミンEを含む食品は保存する場合、冷暗所に置き、なるべく空気に触れないようにしっかりと封をしましょう。
また、ビタミンEを摂る時は、ビタミンAやC、カロテン類などの抗酸化成分と併せて摂ることで、抗酸化作用がより強固になります。これらの成分を同時に含む、青菜などの緑黄色野菜は酸化を防ぐ効果の高い食品と言われています。
ビタミンEは油脂類、種子類に多く含まれいます。野菜や魚介類にも幅広く含まれているので摂取しやすい脂溶性ビタミンです。
ビタミンK
出血を止める「止血ビタミン」です。骨格の形成にも関与します。ビタミンKとして働く成分には植物性食品に含まれるフィロキノン(K1)とメナキノン酸があります。メナキノン類には動物性食品に含まれるメナキノン-4(K2)と納豆に含まれるマネキノンー7があります。
体内でもメナキノン-4(K2)は合成されますが、必要量の半分程度しか作れないので、食品から摂取する必要があります。
*ビタミンKの役割と効果
- 血液凝固因子を活性化
- 骨格の形成
- 骨粗しょう症予防
血液中には血液凝固作用のあるたんぱく質が存在し、けがをしても時間が経てば止血します。ビタミンKは肝臓内でこのたんぱく質が作られるの際の補酵素として働きます。このためビタミンKは「止血ビタミン」と言われます。
また、ビタミンKはじょうぶな骨づくりにも欠かせません。ビタミンDはおもにカルシウムの吸収をサポートしますが、Kは骨への沈着を助ける働きがあります。メナキノン-4は骨粗しょう症の治療にも用いられている成分です。
*効率の良い食べ方
- 油で吸収率アップ
- 納豆がおすすめ
ビタミンKは脂溶性ビタミンのため、油に溶けると吸収がよくなります。脂質を含む食品と一緒に摂取したり、油で調理すると効果的です。ビタミンKは過熱しても安定しているため、炒め物も適しています。
メナキノン類は微生物によって合成されるため、動物性食品や発酵食品に多く含まれています。特に納豆はメナキノン-7という特有の成分で非常に含有量が多く、優秀な供給源です。
ビタミンB1
炭水化物の代謝に重要で、米を主食としている日本人には特に重要なビタミンです。ビタミンB1の成分名はチアミン(またはサイアミン)といい、食事からの吸収率は約60%と推定されています。
*ビタミンB1の役割と効果
- 炭水化物の代謝促進
- 神経機能の維持
- 疲労回復
ヒトは、ごはんやパン、メンなどの含まれる炭水化物をエネルギー源にしています。炭水化物が分解されエネルギー源になるには酵素の力が不可欠です。ビタミンB1はこの酵素の働きを促す補酵素の役割をしています。そのため、ビタミンB1がないと十分なエネルギーを得ることはできません。
また、神経機能を維持する効果もあります。神経活動をコントロールしている脳は多くのエネルギーを必要としています。ビタミンB1は脳にエネルギーがきちんと供給されるように働き、この働きによって脳や神経の機能を維持しています。
疲労回復にも効果的で、含む豚肉は疲労回復に役立つといわれているのはB1を多く含むためです。
*効率がいい食べ方
- 主食は色付きに
- すばやく調理
- にんにく、たまねぎと一緒に
穀物はぬかや胚芽が多く含まれるため、白米や白パンからビタミンB1はほとんど摂れません。米の場合、精白度が高くなり白くなるほどB1の含有量は減ります。パンも同様で白パンよりも全粒粉パンやライ麦パンを選びましょう。
ビタミンB1は水溶性ビタミンのため、流出しやすく熱にも弱いです。調理損失を少しでも防ぐためには、長時間水にさらしたり、加熱しすぎたりせず、手早く調理しましょう。煮物はできたてを汁ごと食べると摂取効率がいいでしょう。
ねぎや玉ねぎ、にんにく、にらなどにふくまれるアリシンはビタミンB1と結合して吸収しやすくなる作用があります。ビタミンB1は肉や魚介類、穀物に多く、特に豚肉には多く含まれています。
ビタミンB2
水溶性のビタミンですが、水に溶けづらいと知られています。食品から大量にとると吸収率が下がり、使われなければすぐに尿に排出されるため欠乏症や過剰症が起きづらい栄養素です。
量の大小はあるものの、ほとんどの食品に含まれています。そのため、通常の食事で不足することはありません。
*ビタミンB2の役割と効果
- 3大栄養素の代謝の促進
- 細胞の再生、新生
- 成長促進
- 抗酸化作用
ビタミンB2はエネルギー代謝の様々な場面で働く補酵素です。炭水化物、脂質、たんぱく質の3大栄養素がエネルギーに変わるのをサポートします。とりわけ、脂質からのエネルギー産生に深く関わっています。
また、「発育のビタミン」と言われていて、たんぱく質の合成をサポートし細胞の再生を促進します。皮膚や粘膜を守る働きもあります。体内の有害な過酸化脂肪酸の除去をサポートするといった役割もあります。
*効率の良い食べ方
- バランスのよい食事
- 保存には注意
ビタミンB2は全ての動植物中に存在しているため、食品にも幅広く含まれています。各種の食品を組み合わせて食べれば十分補給されるので、日ごろからバランスの良い食事を心掛けていれば、不足したり、摂り過ぎたりといったことは起きません。
水溶性ですが、比較溶けづらく、熱にも強いことから調理損失は少ないです。しかし、光に弱いのが弱点です。特に牛乳などは光にあてないように保存しましょう。
ナイアシン
ビタミンB群の1種であるナイアシンは補酵素として非常に多くの代謝に関与します。
魚介類や肉に多く含まれています。植物性の食品では種子類、きのこ類に比較的多く、きのこでは特にエリンギが豊富です。ナイアシンは熱に強いため、調理しても成分に変化はありません。体内での利用率も60%程度と言われており、比較的摂取できるビタミンといえます。
*ナイアシンの役割と効果
- 多くの酵素の補酵素になる
- 3大栄養素の代謝の促進
- アルコール代謝の促進
ナイアシンは炭水化物や脂質、たんぱく質などが代謝されるまで様々な場面で働く補酵素です。これまでに知られている酵素は約2200種類。ナイアシンは約500の酵素の補酵素として関与し、多くの反応に利用されています。
また、ナイアシンはアルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドを分解する補酵素になります。アルコールを代謝する成分として注目されてます。
そのほか、神経や脳機能の正常化、性ホルモンの合成などにも重要な働きを担っています。
*効率の良い食べ方
- ほかのビタミンと一緒に
ナイアシンが効率よく作用されるには、ほかのビタミンB群の作用が必要です。栄養素はほかの栄養素と連携してい働きますが、ビタミンB群にはとくにその傾向が強く見られます。B群は単体よりもまとめて摂ったほうが効率よく作用するため、B群全体を過不足なくとるようにしましょう。
ビタミンB6
たんぱく質の代謝にかかわり、皮膚や神経を正常に保ちます。食事からの理容室は73%で比較的多いという報告があります。
ビタミンB6はおもにたんぱく質の代謝にかかわるため、たんぱく質の摂取量によって必要量が決まります。食事摂取基準でもたんぱく質をもとに策定されています。
*ビタミンB6の役割と効果
- 多くの酵素の補酵素になる
- たんぱく質やアミノ酸の代謝の促進
- エネルギー産出
- 成長促進
食品から摂取したたんぱく質はアミノ酸に分解されて吸収され、このアミノ酸は必要なたんぱく質へと再結合されます。B6は補酵素としてこの過程をサポートします。
そのほか、アミノ酸やグリコーゲンをエネルギーに変換したり、神経伝達物質であるドーパミンやアドレナリンなどを合成したり、赤血球を合成したりと、様々な反応に働きます。
*効率の良い食べ方
- 鮮度のよいものを
- 動物性食品を優先
ビタミンB6は熱や光に弱く、水溶性でもあることから、調理や保存の過程で損失しやすい成分です。冷凍食品や加工食品でも含有量が減ってしまうことがあるので、生の新鮮な食品からとるようにしましょう。
いろいろな食品に含まれますが、動物性食品から摂取した方が植物性食品から摂取するよりも利用されやすいと言われています。魚介や鶏肉などを優先して選ぶと、ビタミンB6をしっかり補給することができます。
また、にんにくは非常に豊富で、植物性の食品の中ではとうがらし、ガーリックパウダー、バジル、そしてにんにくという4位です。
ビタミンB12
コバルトを含み、赤血球の生成に働く「赤いビタミン」です。食品中のビタミンB12はたんぱく質と結合しており、腸で初めて吸収されます。
たんぱく質は1回の食事で約2μgしかビタミンB12と結合できず、それ以外は胆汁に排出されます。その内、半量程度が再吸収され、残りは便で体外に排出されます。
*ビタミンB12の役割と効果
- 造血作用
- 核酸の合成促進
- 神経細胞の機能維持
- 脂質代謝
赤血球は寿命の短い細胞で、常に新しく作り替えられています。ビタミンB12は赤血球が生成されるのを助ける補酵素です。葉酸との関係が深く、この作用も葉酸とともに働きます。どちらの成分が悪性貧血を招きます。
また、神経系の機能維持にも効果的です。睡眠障害、アルツハイマー病、動脈硬化の発症予防などにもなんらかの関連があるとみられ、注目をされているビタミンです。
*効率の良い食べ方
- 空気にふれないように保存
- 煮汁といっしょに
- ベジタリアンは欠乏に注意
ビタミンB12は熱には安定していますが、光に弱く、酸化しやすい成分です。保存する場合はなるべく空気にふれないようにしっかり包むか密閉しましょう。長く保存せず、早めに食べきることも有効です。
水溶性ビタミンのため、調理すると煮汁などに成分が溶け出てしまいます。せっかくの成分を逃がさないために、煮汁ごと食べられる調理にするといいでしょう。豊富に含む貝類からはよい出汁が出るので、スープなど汁物がおすすめです。
動物性の食品には含まれますが、植物性食品には含まれません。ベジタリアンの方はビタミンB12の摂取が望めないので注意が必要です。
貝類、魚類、肉類(レバー)に豊富で、乳製品、海藻類にも含まれています。
葉酸
細胞の新生に働き、胎児の発育や造血に不可欠。葉酸は摂取しにくい成分で食品に含まれる葉酸の体内利用率は50%と見積もられています。摂取基準の策定時もこの利用率を考慮した推奨値を示されています。
*葉酸の役割と効果
- DNAの合成促進
- 赤血球の合成
- 発育促進
- 動脈硬化予防
新しい細胞が合成されるときは、遺伝子情報に従うことで正常に合成が進みます。葉酸は遺伝子情報をもつDNAの合成に関わり、細胞の新生に重要な役割を担っています。この作用は胎児の発育に必要で、葉酸は妊娠の可能性のある女性や妊婦に特に重要です。
また、葉酸は新たな赤血球が正常に作り出されるときにも必須の成分で、「造血のビタミン」とも言われています。赤血球の場合はビタミンB12の作用も必要でともに働いて貧血を防ぎます。
*効率の良い食べ方
- ビタミンB12とともに
ビタミンB12と相性がよく、造血作用などとともに働いて効果を発揮することが多々あります。また、ビタミンCには葉酸を活性化させる効果があり、ビタミンB12、ビタミンCと一緒にとるとより強力に働きます。
パントテン酸
パントテン酸は向井はビタミンB5と呼ばれていたB群の一種です。多くの食品に含まれており、食品から摂取する他、体内では腸内菌によって合成もされます。
パントテン酸のもっとも重要な働きはコエンザイムAの構成成分になる点です。コエンザイムとは補酵素のことで、3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)のエネルギー代謝の過程で非常に多くの酵素をサポートします。
*パントテン酸の役割と効果
- コエンザイムAの構成成分になる
- エネルギー代謝に関与
- ホルモンの合成に関与
3大栄養素の代謝に関与し、とくに脂質や炭水化物の代謝に大きく関与します。エネルギー産出、ホルモン合成などに必要です。多くの食品に含まれているので欠乏することは通常はありませんが、仮に欠乏すると成長停止、副肝障害などが起こります。
ビオチン
3大栄養素の代謝に関与し、皮膚を健康に保ちます。通常の食事では不足することはありません。ビオチンは抗炎症物質を生成し、アレルギー症状を緩和するといった効果も期待されています。
*ビオチンの役割と効果
- カルボキシラーゼの補酵素になる
- 3大栄養素の代謝に関与
- 皮膚の健康維持
炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝にかかわります。また、皮膚を健康に保つ働きがあるとみられ、アトピー性皮膚炎の改善に効果が期待されています。
ビタミンC
コラーゲンの生成に不可欠で強い抗酸化作用がある栄養素。食品から摂取したものの体内利用率は約90%ですが、過剰に摂取すると約50%まで落ちます。食品でもサプリメントでも効果に違いはないと言われています。
ヒトやサル、ウシなどの動物は体内で合成できないため、ビタミンとして認められています。
*ビタミンCの役割と効果
- コラーゲンの合成促進
- LDLの酸化防止
- ホルモンの合成促進
- 鉄の吸収促進
体内のたんぱく質のうち、約3分の1は細胞と細胞を繋ぐコラーゲンで、ビタミンCはこのコラーゲンの合成に関与しています。コラーゲンが不足すると細胞同士の結びつきが悪くなり、血管や皮膚、骨がもろくなります。
強い抗酸化作用があり、LDLコレステロールの酸化を防いで血管疾患を予防すると言われています。また、ホルモンの合成を促進したり、鉄の吸収を助けたり、メラニン色素の沈着を防いだりする働きがあります。美容分野でも人気のビタミンです。
*効率のよい食べ方
- 毎食欠かさず補給して効果を継続
- いもに含まれるビタミンCは壊れにくい
- 鮮度の良い食品を新鮮なうちに
体内のビタミンCは約400mgで飽和状態になるとみられています。つまり沢山摂取しても体内に蓄積はされず、体外に出てしまいます。効果を継続させるためには毎食かかさず補給するのがいいでしょう。
じゃがいもやさつまいもも多くビタミンCが含まれています。いもに含まれるビタミンCはでんぷんがビタミンCを守る為、調理による損失が少なく、その分しっかり摂取できます。
水溶性なので水に溶けやすく、熱に弱く、酸化しやすいです。野菜や果物は新鮮なものを購入し長く保存せず、手早く調理するようにしましょう。
野菜や果物に多く含まれ、動物性食品にはほとんど含まれていません。赤や黄色のピーマンやブロッコリー、青野菜類。果物だといちご、柿に多いです。
栄養はまだまだ分からないことが多い

栄養素はまだまだ分からないことが多い分野です。ひと昔前は卵は1日1個までと言われていた時代もありますが、今では多く食べた方がいいと言われています。研究が進み、新しい発見があり、そしてブームによって栄養の考え方は変わっていきます。
しかし、変わらないことは「様々な食材を食べて、色々な栄養素をとることが大切だ」という点です。
栄養素は相互に働き、効果があります。食事に色々な食材を採用し、食を楽しみながら健康に過ごしていきましょう。